量子科学技術研究開発機構(QST)は、モノベエンジニアリングおよび倉敷繊維加工と共同で、排水中のホウ素を従来比約500倍の速さで除去できる新技術を開発した。本成果は、環境省・環境再生保全機構の環境総合研究推進費による支援を受けており、2025年11月10日に北九州国際会議場で開催される第35回日本MRS年次大会で発表された。
ホウ素はめっき業やガラス製造業、温泉施設などで広く利用される一方、長期曝露による健康リスクが報告されており、水質汚濁防止法で排水中濃度は10mg/L以下に規制されている。しかし、従来技術は処理速度が遅く、大型設備が必要であるため、暫定基準が長年適用されてきた。こうした状況を踏まえ、処理速度の飛躍的向上と装置の小型化が求められていた。
本技術は、親水性が高く表面積の大きいセルロースに放射線グラフト重合でホウ素選択性の官能基を高密度に導入した吸着材と、独自構造のバネフィルターを組み合わせたものである。圧力損失を抑えつつ水流との接触効率を最大化する設計により、従来比約500倍の速度でホウ素を除去することに成功した。この性能向上は、限られたスペースでの高効率処理を可能にし、小規模事業所や温泉施設での導入を現実的なものにする。さらに、除去後のホウ素は酸処理により回収でき、処理コスト低減と資源循環の両立が期待される。有害物質の除去にとどまらず、有用元素の回収にも応用可能であり、持続可能な水処理技術への展開が見込まれるという。
| 情報源 |
QSTプレスリリース
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| 機関 | 量子科学技術研究開発機構(QST) (株)モノベエンジニアリング 倉敷繊維加工(株) |
| 分野 |
水・土壌環境 |
| キーワード | 排水基準 | 吸着材 | 資源循環 | 水質汚濁防止法 | 水処理技術 | ホウ素除去 | 暫定基準 | 放射線グラフト重合 | バネフィルター | 環境総合研究推進費 |
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