令和8年度環境保全経費の概算要求総額は2兆4,933億円となり、令和7年度当初予算比+6.3%(+1,476億円)と増額で取りまとめられた。
環境省は、関係府省の施策を横断的に調整する基本方針(令和7年8月8日公表)に基づき、環境保全に資する新規施策の妥当性をヒアリングで確認のうえ、全体を集約し財務省に提出した。今回の伸びは、GX(グリーントランスフォーメーション)関連、自然資本の再生、汚水処理・下水道の強靭化など、脱炭素と環境レジリエンスの両輪を同時に進める構図を反映している。
施策体系別に配分を整理し、複数体系にまたがる経費は主要区分で集計。地球環境の保全(1兆4,173億円)には、省エネ投資促進、需要構造転換、GXサプライチェーン構築、森林環境保全整備、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金、高温ガス炉実証炉開発などを含めた。生物多様性(2,010億円)には水源林造成、治山、国営公園維持、都市水環境整備、文化財保存、鳥獣被害防止等を網羅。循環型社会(805億円)は循環交付金、災害時の廃棄物処理体制整備、PCB廃棄物対策、資源循環推進を柱とした。
一方、水・土壌・海洋・大気環境の保全・再生(3,714億円)のうち、防災型下水道、道路環境改善、多面的機能支払、交通安全施設整備、適正な汚水処理、水産環境整備で底上げされた。また、放射性物質による環境汚染の防止(2,496億円)は中間貯蔵や除去土壌管理の進展により前年度比で減少した。包括的な化学物質対策(47億円)はわずかに増額され、化審法施行経費や食品安全の分析技術活用等に重点が置かれた。なお、各種施策の基盤(1,688億円)はデータ・モニタリング、人材・制度の整備を支える。これらは季節性・広域輸送の環境影響(例:MSAや微量汚染物質の挙動)を見通す観測・モデルの整備とも連動し、自治体・企業のエビデンスベースの政策・投資を後押しする。
今回の取りまとめにより、脱炭素の加速(省エネ・再エネ・GX供給網)と自然資本の回復(治山・都市水環境)、生活圏の環境質改善(下水道強靭化・道路環境)を同時に進める構造が予算案上で示された。化学物質・PFAS対策や資源循環の強化は、国際規制動向への対応と国内の測定・監視基盤の整備に直結する。今後、政府予算案の決定時には、配分の具体化と政策効果の検証が焦点となる。