大学研究室紹介

「環境中有機汚染物質の液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)に関する研究」(鈴木 茂教授)

中部大学応用生物学部環境生物科学科鈴木研究室

研究内容

  • テーマ:
  • 環境中有機汚染物質の液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)に関する研究
  • 概要:
  • 研究内容は、環境中有機汚染物質の(1)液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)、(2)ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)に関する研究です。
    当研究室では、「測る」技術を開発して、化学物質による環境汚染を調査しています。「測る」技術の開発を通じて、科学的知識を習得し、分析技術を向上させることが主な目的です。
    大気、水質、土壌、底質、生物、廃棄物など環境を構成する媒体に微量に存在する既知、未知の化学物質を「測る」技術を開発し、実際に調査します。「測る」技術の開発には、環境媒体からの抽出技術、クロマトグラフィーによる分離技術、マススペクトロメトリー(質量分析法)による有機分析技術を使います。
    分析法開発と調査を中心に研究を進めていますが、社会のすべての分野の活動は環境に影響を与えていることを考えると、技術的な部分だけではなく、環境汚染の研究を通じて人間の活動と環境との関わりを考えることも研究に反映させています。
  • キーワード:
  • 化学物質分析, 大気、水質、土壌、底質、生物、廃棄物, 「測る」技術の開発, 液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS), ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)
  • 学部体系:
  • 農学・生命科学系(農学・生命科学系)
  • 研究分野:
  • ごみ・リサイクル(その他廃棄物・リサイクル関連)、健康・化学物質(分析・モニタリング・評価関連)、大気環境(その他大気関連)、水・土壌環境(その他水・土壌関連)

    臭素化難燃剤のLC/MS条件の検討風景

    研究室のゼミ風景

    試料処理風景

    研究室概要

  • 大学・研究室名:
  • 中部大学応用生物学部環境生物科学科鈴木研究室
  • 研究室の特色・PR:
  • 私の研究室では、研究テーマ、研究計画は学生自身が決めています。まもなく社会に出て行く学生に、研究全体のシナリオを自分で作り、それを推進することは、大学ができる大切な贈り物と考えるからです。分析の主役となるのは2種類の質量分析計(MS)で、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)と液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)です。これらの装置は高価でですが、外部の研究資金やメーカーからの協力を得て、学生の研究に活用しています。昨年の研究テーマは、LC/MSによるプラスチック製の乳幼児用品・玩具から溶出する化学物質の調査、糖のLC/MS高感度検出法の研究、稲作における水田及び作物中の農薬濃度変化、事業所周辺におけるPFOS・PFOAの濃度調査、酸性雨と多環芳香族炭化水素の広域汚染に関する研究などです。昨年度は、4名の学生が学会で発表しました。また、研究の指導には、私自身の研究を進めることが大切で、それが学生への刺激になると考えています。最近の研究では、現在使われる溶媒の百分の一の量で現在の数十倍の感度を得られるLC-MSの開発、感度の低い化学物質のための高感度検出器の開発が進行中です。そのほか、外部の機関の研究者と研究交流を進めています。国、地方公共団体の環境研究機関、民間の分析機関、分析装置関連企業などの研究者、技術者との交流は新しいアイデアを生む源です。海外の研究者には、日本人の感覚にはない有用な発想、斬新なアイデアがしばしばあります。学生との直接交流も含め、そうしたアイデアに触れるチャンスも作っています。
  • 先生のプロフィール:
  • 氏名:
    鈴木 茂
    出身大学:
    横浜国立大学工学部
    卒業研究のテーマと概要:
    学部:大気中有機硫黄化合物の高感度分析法開発
    大学院:質量分析法による有機大気汚染物質の分析法に関する研究(横浜国立大学大学院、論文博士)
    職歴など:
    川崎市公害研究所大気研究担当 副主幹
    川崎市環境局化学物質担当 副主幹
    国立環境研究所循環型社会形成推進廃棄物研究センター 主任研究員
  • 所属学生の人数:
  • 11~20人程度
  • ゼミの恒例行事(旅行・実習・調査など):
  • 1泊2日程度
    年 1回
    2泊~1週間未満
    年 0回
    1週間~1か月以内
    年 0回
    1か月以上
    年 0回
  • 研究室連絡先:
  • 愛知県春日井市松本町1200
    0568-51-1111(代表)

    試料採取風景

    試料採取風景

    研究室メンバーからのメッセージ

    分からないことがあれば、分かるまで先生が丁寧に教えてくれます。
    いろんな環境に関する職場で働いていらっしゃたので、知識と経験が豊富で、分からないことを質問したら、絶対答えが返ってきます。
    どんなに小さな事でも丁寧に教えてくれる優しい先生です。
    研究が趣味の一環です。実験の話をしている時は本当に楽しそうです。
    LC/MSという機械を使って、分子をイオン化させて質量を測定します。たとえば環境中に汚染物質がどの程度存在しているのか、また食品中に農薬がどれだけ残っているのか、普段使っている日用品から化学物質が染み出してこないか?など生活の中の身近な物の分析から、大気や河川といった地球規模のものまでいろいろな機械や道具を使って測定を行っています。
    人間が生活していく上で、ゴミの問題は切っても切り離せない問題です。このことから、山の奥地にあるゴミの埋め立て処分場から出てきた侵出水を分析したいと考えています。この水は処理されて川に流されていますが、それでも出てきてしまう物質があります。これらの物質が川に出て、その後どういう運命を辿るのか追いかけていく予定です。卒業研究が始まって、コツコツとやることが大切であると感じています。時には失敗もありますが、前向きに取り組んでいく事で、結果+αで何か成果が得られるのではないかと考えてます。長くなりましたが、最後に先生は研究の事はもちろん、普段の何気ない相談にものってくれます。なので、リラックスした状態で実験に取り組めています。とてもありがたいことです。

    先生からのメッセージ

    【環境化学物質研究へのお誘い】
     私たちが住む地球上には約3000万種類の化学物質があり、その大部分は20世紀から21世紀にかけて人間が作り出したものです。化学物質の開発は年々加速し、最近では年間に数百万種の新しい物質が作られています。私たちが直接触れる可能性がある化学物質は数十万種と言われ、大部分は人が健康に暮らすことに役立っています。
     他方、化学物質の一部が生物や環境中に蓄積し、人や他の生物の生存を脅かすこともこれまでに何度か経験してきました。測る技術がなければ分からないため、顕著な障害が現れるまで気づき難いこと、汚染は直接人や動植物の生存に関わることがとくに深刻な点です。
     「測る」技術を開発して化学物質汚染を早期に発見することが必要です。鈴木研究室では、「測る」技術を開発して化学物質による環境汚染を調査しています。「測る」技術の開発を通じて、科学的知識を習得し、分析技術を向上させることが主な目的です。分析技術の開発とそれを使って知る環境汚染から、科学すること、環境に携ることへの充実感を経験されることと思います。

    【大学進学に向けた勉強について】
     受験勉強については、高校や予備校で詳しく聞かれていることと思います。ここでは、大学入学後に役立つ事柄を書きます。
    (1)自分で考える力を伸ばす。(日本人の多くは苦手。研究に限らず、遭遇する個々の場面で何が大切かを考える力を着ける。)
    (2)自然環境、社会環境に関する本や情報を見て、関心を深められると良いでしょう。
    (3)大学で学ぶ基礎科目(化学、生物学など)は事前に勉強する必要はありません。入学後しっかり勉強してください。本学では希望する研究室への配属は、大学での成績順に行われています。希望する研究室への配属のためだけでなく、大学での研究や社会での応用力を支える基礎になります。

    (2009年1月現在)