生物多様性条約第11回締約国会議において「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)の湿地と水に関する報告書が公表され、さまざまな提言が示された。湿地は、生物多様性を支え、漁業や観光などの産業を強化するとともに、清浄な飲料水や洪水の防止などさまざまな生態系サービスを提供しているが、20世紀以降、急速に劣化・減少しているという。農業の集約化、持続不可能な取水、都市化、インフラ整備などがその主な原因で、結果として国や地域社会、企業に深刻な経済的負担をもたらしている。報告書では、湿地や水が人間の生活や生物多様性において果たす役割を認識すること、資源効率の高い持続可能な経済への移行において重要な要素としてその価値をあらゆるレベルでの意思決定に組み込むことが必要だとし、国、地域社会、研究者、企業などに向け具体的・実用的な提言を示している。また、湿地および水に関連する生態系サービスの回復が、現在世界の重要課題である水問題の解決に向け、持続可能で費用対効果の高い対策となる可能性があるとしている。