(独)科学技術振興機構(JST)は、課題達成型基礎研究の一環として、光合成微生物であるラン藻が作るバイオプラスチックの増産に成功したと発表した。代表的なバイオプラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、糖や油脂を原料としており、生産コスト、エネルギー供給や資源の枯渇などの問題を抱えている。一方、ラン藻は、光と二酸化炭素のみでPHAの一種であるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を生産する光合成微生物であるが、現在生産に利用されているほかの微生物に比べてPHBの収量が1桁以上低く、増産のためには、ラン藻のPHB合成遺伝子の転写制御機構解明が鍵とされていた。今回、微生物内で炭素代謝の制御因子である「SigE」に着目し、遺伝子改変によりラン藻細胞内で「SigE」のたんぱく質量を増やした結果、PHB生合成遺伝子の転写量やたんぱく質量が増加し、PHB量は約2.5倍増加し、SigEがPHBの合成を制御すること等が分かった。今後、この新たな手法を用いてPHBの更なる増産を実現することで、カーボンニュートラルな社会の構築に貢献することが期待されるという。