名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所・理学研究科の木下俊則教授、ワン・イン研究員らは、(独)科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、気孔の開口を大きくすることで光合成と植物の生産量を増加させる技術を開発したと発表した。気孔は、植物における二酸化炭素(CO2)の唯一の取り込み口で、植物が盛んに光合成を行っているとき、CO2を気孔から取り込むが、気孔において生じる抵抗がCO2の取り込み量を制限していた。気孔をより大きく開かせることができれば、植物の生産量の向上が期待されるが、これまでに気孔開口を制御する技術は報告されていなかった。今回、気孔を開かせる原動力となる細胞膜プロトンポンプを「シロイヌナズナ」の気孔でのみ増加させたところ、気孔の開口が25%ほど大きくなることを発見した。その結果、植物のCO2吸収量(光合成量)が約15%向上し、生産量が1.4~1.6倍増加することを明らかにした。今後、この技術を用いることにより、農作物やバイオ燃料用植物の生産量増加や、植物を利用したCO2削減への応用が期待されるという。