(独)科学技術振興機構(JST)は、課題達成型基礎研究の一環として、スタンフォード大学の小笠原寛人スタッフサイエンティストらの研究グループが、燃料電池の性能向上には、触媒として使用している白金近くの水分子が重要であることを明らかにしたと発表した。固体高分子型燃料電池には、触媒に高価な白金が使用されており、特に正極で起こる酸素還元反応では触媒活性が低く大量の白金が不可欠であるため、燃料電池の起電力の向上と白金使用量低減の妨げとなっている。今回、環境制御型光電子分光装置を用いて、酸化還元反応中の正極を観測し、酸素還元反応中に水分子と結合した水酸基(水和水酸基)と水分子と結合していない水酸基(非水和水酸基)が共存していることなどを明らかにした。今後、この知見をもとに白金触媒近くの水分量を分子レベルで適切に制御することで、酸素還元反応経路の最適化、燃料電池の性能向上を目指すアプローチが考えられ、貴金属である白金の使用量低減、固体高分子形燃料電池の低コスト化が期待されるという。