国立環境研究所は、「内湾生態系における放射性核種の挙動と影響評価に関する研究」(研究代表者:堀口敏宏)の成果報告書を公表した。同報告書は、2011年3月11日の東日本大震災に付随して起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故後の東京湾における放射性核種による汚染について、放射性セシウム(134Cs及び137Cs)を中心に、その空間分布と経時変化を取りまとめたもの。放射性セシウムは、大気からの直接降下・沈着のほか、関東平野を含む流域への沈着後の河川等を経由した流入と福島沿岸水に含まれる核種の親潮(外洋水)からの供給を通じて東京湾の水質と底質を汚染したものの、底棲魚介類の汚染は軽微に留まったことが明らかになった。同研究成果により、原発事故由来の放射性核種による環境汚染の実態解明、その問題解決や改善が進むとともに、放射性核種による海洋汚染と潜在的な生物影響に関する学術研究の進展に資することが期待されるという。