産業技術総合研究所と太平洋セメント(株)は、微生物を活性化することで、岩盤のセレンを効率的に不溶化できることを発見した。セレンは水質汚濁や土壌汚染に関する法令に定められた有害物質のひとつで、トンネル工事などで発生する岩盤の掘削ずり(以下「岩塊」)にも含まれている。岩塊のセレンは雨水などでイオン化し、環境に溶出することが懸念されるが、化学的な処理では還元されにくく、不溶化処理が困難である。そこで微生物などを用いた不溶化・無害化処理技術の開発が希求されている。両者は、環境微生物研究で蓄積された知見と、重金属類不溶化技術の開発実績を連携・発展させて、国内の岩塊試料に6価セレンと「乳酸」を添加し、嫌気環境下で14日間静置する実験を行った。その結果、顕著なセレンの不溶化とともにClostridia綱に属する微生物の増加が観察された。増加した微生物のほとんどはこれまでセレン還元能を有することが報告されておらず、今回初めて乳酸酸化とセレン還元の共役反応によるセレン不溶化に関与することが明らかになった。加えて、乳酸の発酵的代謝で生じた還元力を6価セレンに渡すことでセレンが不溶化される代謝メカニズムも示された。これらの結果に基づき、新たなバイオレメディエーション技術の開発が期待できるという。
情報源 |
産業技術総合研究所 研究成果
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機関 | 産業技術総合研究所 太平洋セメント(株) |
分野 |
水・土壌環境 |
キーワード | バイオレメディエーション | 土壌汚染 | 乳酸 | 水質汚濁 | 有害物質 | セレン | 太平洋セメント | 掘削ずり | 環境微生物研究 | 重金属類不溶化技術 |
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