国立循環器病研究センター、関西大学および国立環境研究所の研究グループは、熱中症による救急搬送の全症例件数および中等症以上症例件数を12時間毎に市町村単位で予測できるモデルを構築した。世界各地で地球温暖化に伴う猛暑日の増加や熱波の発生事例が報告されており、熱中症発症リスクの増加が懸念されている。熱中症リスクの評価においては、気温と湿度と日射量を複合したWBGT(湿球黒球温度)が活用されているが、日本の7・8月のほとんどの日が高リスクであるため、特にリスクが高い日を判別できないといった問題点が指摘されていた。同研究グループは、気候条件のみならず、複数のデータに基づく詳細な評価を実現するために、「特徴量」に天気情報と暦情報と公開されている市町村の統計情報(人口、人口男女比、高齢化割合、緑地面積等)を、「教師データ」には熱中症による救急搬送の全症例件数と中等症以上症例件数(入院診療、長期入院、死亡例)を用いた。なお、この教師データは、市町村の消防署より提供を受けた匿名化済みの救急搬送情報に基づいている。複数の機械学習アルゴリズムによるAI予測モデルと古典予測モデルを作成し、それらの比較検証を行った結果、予測精度の高さが実証された。AI予測モデルの社会実装は比較的容易で、熱中症アラートの発信を通じた熱中症予防への貢献が期待できるという。