海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東北大学、新潟大学、名古屋大学および産業技術総合研究所は、日本の排他的経済水域(EEZ)内で、数万年以上前に地球内部に取り込まれた炭素の溶出や地球規模の炭素循環に寄与している岩石を発見した。地球表層に存在する炭素は、プレートの沈み込みに伴って地球深部まで持ち込まれた後に地表に戻っている。最近の研究では、沈み込んだ炭素が比較的浅いところから戻っている事例が報告されており、炭素大循環における重要性が指摘されている。JAMSTEC等は、沈み込み帯浅部における炭素循環の「時間スケール」を明らかにするために、有人潜水調査船を用いて採取した岩石試料の詳細分析を行った(試料採取地点:伊豆・小笠原海溝・海亀海山、水深:6,400メートル)。同試料は蛇のような紋様から「蛇紋岩」と呼ばれているもので、破砕時に結晶内にCO2を固定した「炭酸塩鉱物」を析出する。今回、細脈の炭酸塩鉱物や年代推定を行った結果、同試料の炭素が海水起源のものであることが明らかになった。また、数万年以上の間、プレート上盤の沈み込み帯前弧マントル内に滞留していたことが分かった。さらに深海水の年代を考慮した結果、マントル中の岩石が破砕され、その流体が数十年以内の短い期間で噴出することで「炭酸塩」が生成すると考えられた。EEZ内でマントル岩石に関連する冷湧水の痕跡が確認された初の事例であり、前弧マントルが海水と炭素を数万年間貯蔵できることや、海底の高所部で蛇紋岩化が起きることで生命活動に必要なエネルギーが生産されている可能性が示唆されたと述べている。