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 共生生態が超ユニークなゴカイ類を発見 石巻専大など

発表日:2022.06.29


  石巻専修大学ほか2大学の研究者と伊豆大島のダイバーらからなる共同研究グループは、セルロースを主成分とするホヤの被嚢(ひのう、外側の殻のような部分)に孔をあけ、餌を上手く摂っている、珍奇なゴカイ類を発見した。海のパイナップルとも呼ばれるホヤ類は、形状のみならず、幼生から成体に変態する過程や生活史が特徴的で、動物のなかでは唯一、植物繊維の「セルロース」を合成することができる。藻類との共生関係などが理解されつつあり、硬い摂食器官を持ち被嚢を食べていると考えられる被嚢穿孔性のゴカイ類の生息が一例だけ報告されていた。今回の発見は、それに次ぐ世界2例目の報告であり、硬い摂食器官を持たないので被嚢を食べることはせず、ホヤの水流を利用して餌を採るという共生関係の珍しさにおいては世界初の報告となる(Abe, H. et al., 2022)。日本近海には、三陸の珍味として流通しているマボヤの他にも多様なホヤ類が分布している。今回発見されたゴカイ類は、シロボヤ科のホヤ類と共生関係を結んでおり、「ホヤに住むスピオ科 Polydora 属の多毛類」という意味の学名が命名された(和名:ホヤノポリドラ)。今回の成果は、年間500本以上におよぶ地道な潜水観察を行っているダイバーの発見をきっかけとしている。国内2か所(伊豆大島北部のダイビングスポット・秋の浜、和歌山県の堺漁港)で、ホヤの体表に泥の管を作り、生活しているゴカイ類(ホヤ1個体当たり最大数10個体程度)が見い出され、近接した2個の孔が密集している様子が観察された。そこで、研究者が参画し、マイクロCTを用いたホヤの内部構造観察が行った結果、泥の管や2個ずつ対のように見える孔はU字状につながっていることが分かった。また、酵素活性に関する分析を行ったところ、ホヤノポリドラがセルロース分解酵素(セルラーゼ)の活性を有していることが明らかになり、この酵素を分泌して穿孔している可能性が示唆された。さらに、ホヤノポリドラがあけた孔は、ホヤ類の入水孔(海水の取り込み口)と出水孔(海水のはき出し口)の近くに形成されていることから、ホヤ類のろ過摂食に伴う水流を利用しながら,頭部の2本の触手で餌を摂っていると考えられた。研究者とダイバーがタッグを組むことで、身近な海に生息する、興味深い生態を持った海洋生物への理解が一層広がる、と期待を募らせている(掲載誌: Zootaxa、DOI:10.11646/zootaxa.5159.1.1)。

情報源 石巻専修大学 ニュースリリース
ホヤノポリドラ(YouTube動画)
島根大学 ニュース・トピックス
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機関 石巻専修大学 伊豆大島ダイビングサービス・チャップ リージョナルフィッシュ株式会社 島根大学研究・学術情報本部エスチュアリー研究センター 東北大学
分野 自然環境
キーワード セルロース | 伊豆大島 | セルラーゼ | ダイバー | ホヤ | 被嚢 | ゴカイ類 | 被嚢穿孔性 | ホヤノポリドラ | ろ過摂食
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