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 「環境保全に対する多様な価値観」を体系的に解明 神戸大など

発表日:2022.06.30


  神戸大学、東京都市大学および京都大学の研究グループは、「環境保全に対する価値観の違い」を計量・分析し、環境影響評価に反映させる枠組みを確立した。本研究は、環境問題に関する合意形成を図る上でこのような環境価値観の違いが大きな妨げとなっており、国際的な合意の破棄や環境保全施策の停滞を回避するために、その来歴に係る共通理解が重要、との視座に立っている。こうした地球規模かつ複雑・多様なテーマに対し、同研究グループは、G20諸国で収集された大規模同時調査データ(回答者の属性:世界19ヵ国に居住する成人男女、有効回答数:6,000名以上)を体系的に分析した。考案された手法では、経済活動(生産/消費)から環境価値観の違いが生じるまでの過程を一般化しており、介在する「CO2、メタン、大気汚染物質(以下「汚染物質等」)」と、「環境価値観の違いに直結する『被害』」の関係を評価対象としている。サプライチェーン全体の環境影響評価などに利用されている「ライフサイクル影響評価(LCIA: Life Cycle Impact Assessment)」と、計量経済学的な評価を組み合わせた評価スキームにより、疫学・毒性学・大気汚染学等の知見を踏まえた、高精度・網羅的かつ学際的なモデリング「LIME: Life cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)」が実現した。複数の汚染物質等が8つの影響カテゴリー(例:気候変動、大気汚染など)を経由して影響する4種類の『被害』(例:人間の健康、社会的資産、生物種の絶滅リスク、植物の生産力)の推定値(量、額)をベースラインとして、それらの被害の軽減することの社会的重要度を、社会指標(例:平均寿命、所得、男女の不平等感など)および個人指標(例:相対所得、主観的幸福など)を用いて説明することができる。国別の傾向分析(例:高所得国では生物多様性を保全する対策が優先される)、あるいは居住する国を問わない、セグメント別の傾向分析(例:平均寿命が短い国やジニ係数が大きい国では人間の健康を優先する)も可能となり、環境被害の軽減に対して支払ってもいい金額(支払意思額)の多寡も分析できるという。

情報源 神戸大学 研究ニュース
東京都市大学 プレスリリース
京都大学 Latest research news
機関 神戸大学 神戸大学社会システムイノベーションセンター 東京都市大学 京都大学
分野 環境総合
キーワード LIME | 支払意思額 | 被害 | LCIA | 環境保全に対する価値観 | 格差 | ライフサイクル影響評価 | 計量経済学 | 社会指標 | 個人指標
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