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 世界初!絶滅危惧鳥類4種のiPS細胞を樹立 国環研など

発表日:2022.10.25


  国立環境研究所、岩手大学、猛禽類医学研究所、NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄および岐阜大学の研究者グループは、世界で初めて絶滅危惧鳥類のiPS細胞を樹立した。野生動物の減少が進み、絶滅の危機に瀕している生き物が増加している。生物多様性保全の観点から、「生息域内における保全(例:保護区の設置)」と「生息域外における保全(動物園等における保護)」を一体的に推進する「ワンプランアプローチ」が提唱されており、細胞の凍結保存も含めた施策の重要性が高まっている。国立環境研究所では、さまざまな野生動物の体細胞を収集・保存し、感染症の感受性評価や全ゲノム解析を進めている。より高度な評価を実現するためには、神経細胞や肝細胞を直接取得し、各種分析を行うことが望ましい。しかし、現実的に取得できる体細胞(サンプル)は皮膚または筋肉由来の細胞が中心であるため、神経細胞などを直接評価することは困難であった。絶滅危惧鳥類の保護に向けた研究リソースの充実化が喫緊の課題となるなか、同グループはiPS細胞(人工多能性幹細胞)技術の応用を着想した。当該技術は、皮膚等から採取した細胞を基にしたiPS細胞を特定の細胞に分化させるもの。ヒトiPS細胞を用いた感染症研究や毒性評価が進められており、海外ではiPS細胞などによる絶滅危惧種の保全生態学的研究が始まっている。本研究では、絶滅危惧鳥類4種(ヤンバルクイナ、ライチョウ、シマフクロウ、ニホンイヌワシ)のiPS細胞の樹立を試行している。初期の状態(発生初期の受精卵に近い状態)に戻した細胞の遺伝子発現解析を行った結果、未分化な状態を示すことが確認された。さらに、試験管内・生体内の両方で三胚葉に分化できることが明らかになったため、iPS細胞であることが特定され、実際に神経様細胞への分化に成功している。絶滅危惧種の生体を使った実験は困難であるが、本研究で樹立したiPS細胞を利用することで、高度な病原体感染実験や汚染物質ばく露試験によるリスク評価が可能になるという。

情報源 国立環境研究所 報道発表
岩手大学 研究紹介
岐阜大学 研究・採択情報
機関 国立環境研究所 岩手大学 猛禽類医学研究所 NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄 岐阜大学
分野 自然環境
キーワード 絶滅危惧種 | ヤンバルクイナ | ライチョウ | シマフクロウ | iPS細胞 | 保全生態学 | 凍結保存 | ワンプランアプローチ | 人工多能性幹細胞 | ニホンイヌワシ
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