国立環境研究所は、湖沼の生態系を模した大型実験プール(10×30×D 2.5 m)を用いて、「水位低下(法)」の野外操作実験を行った(於:同研究所霞ヶ浦臨湖実験施設)。日本では、ため池の水を抜き、泥を浚う“掻い掘り(かいぼり)”や、貯水池の“干し上げ”が行われている。それらは冬の伝統的な行事となっており、底泥の酸化・固化が促進され、夏のアオコ(藍藻類の異常発生)抑制につながるケースが多数報告されている。しかし、水位低下の程度と水質改善効果の発現メカニズムは未解明な点が多い。他方、気候変動に伴い、湖沼の水温上昇や栄養塩負荷の増大が懸念されており、水環境の変化に応じた機動的な対策が求められている。本研究は、野外操作実験とセンサー類を駆使した高頻度観測を組み合わせた新しいアプローチを導入して、水位操作によって貧酸素状態とアオコを同時に改善できるか否か、どのようなメカニズムが関与しているか特定することを目的としている。実湖沼で起きているプロセスを再現するために、貯水を富栄養化するステージ(5月下旬~7月中旬)と、水位を段階的に下げるステージ(7月下旬~8月下旬)を連続的に実施した。その結果、水位を25~50%低下させることで、一時的に底層の貧酸素状態が解消され、アオコが減少することが明らかになった。また、水位低下に伴う水温の鉛直分布や、底層の光環境の変化が、ダブル効果を支える主要メカニズムとなっていることが示唆された。本成果は、流域からの栄養塩負荷対策はもとより、湖内で行う水質改善対策の新しい選択肢を提示している。農業水利などに配慮した運用、洪水対策との統合などが想定され、適応策のオプションとして「浅く富栄養化した湖沼の水位操作」を積極的に検討していく必要がある、という。
情報源 |
国立環境研究所 報道発表
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機関 | 国立環境研究所 |
分野 |
水・土壌環境 |
キーワード | 気候変動 | 霞ヶ浦 | 適応策 | 富栄養化 | アオコ | 水質改善 | 水位低下 | 野外操作実験 | 栄養塩負荷 | 貧酸素状態 |
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