海洋研究開発機構(JAMSTEC)と長崎大学らの研究チームは、直径100kmに達する海流の渦(メソスケール渦)の生物生産を支えている海洋構造を発見した。この成果は、JAMSTECが津軽海峡東部で2014年から展開している「海洋短波レーダ(HFR)」観測網によって得られたもの。HFRによって同海域の長期的な海面の流速変動データを取得し、船舶観測の結果と結びつけることで、深海から栄養塩に富んだ水を巻き上げ、混合する"ごく狭いユニークな領域"があることが判明した。この領域は青森県東通村の尻屋崎(しりやざき)沖合に在り、「津軽ジャイアー」と呼ばれる渦の生産性に関与している。つまり、下北半島太平洋側や三陸沖における植物プランクトンの安定的な生産を支え、広域的な物質循環や漁場形成に寄与している。研究者は、この海洋構造を「砂漠の井戸」と呼び、津軽暖流を通じた効率的なモニタリングや将来予測の精度向上に役立ていく方針だ(掲載誌:Nature Communications)。