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 ひっつき虫は誰が運ぶ?植物と動物の知られざる関係が明らかに

発表日:2023.04.12


  東京農工大学とミュージアムパーク茨城県自然博物館(以下「自然博物館」)の共同研究チームは、植物が種子を動物の体表に付着させることで散布させる様式(付着散布)の解明に迫る、ユニークな実態調査の成果を発表した。付着散布を行う植物の種子は、動物の体表に付着しやすい独特の構造(フック、刺や粘液)を持ち、俗に「ひっつき虫(くっつき虫)」と呼ばれている。ひっつき虫は人間の衣服に付着することもあるが、実際の林地において関与している動物種や、付着しやすい植物種、付着する種子の量を左右する要因等に関する知見は極めて乏しい状況にあった。野生動物の直接観察そのものが容易ではなく、ましてや付着散布の実態把握はさらに難易度の高い。そうした背景を踏まえて、本研究では中型哺乳類6種(アカギツネ、アナグマ、アライグマ、タヌキ、ニホンイタチ、ハクビシン)の剥製模型を用いて、林地内で動物が歩行している様子を再現する手法を採用している。それらの模型を自然博物館の野外施設にある林の縁5地点で10 m走行させ、体表(体毛等)に付着した種子を部位ごとに回収するスキームで、植物が生育している10月と植物が枯死した12月に付着調査を行うとともに、植物の種子の結実の状態(高さや成熟の有無)を毎月記録した。調査を通じて、植物7種、合計9,033個の種子が回収された。付着する種子の量には動物の体毛の長さに加え、種子が結実する高さと動物の部位(頭上面、頭下面、胴上面、胴下面、四肢、尾)の高さとの重複範囲の幅が影響することが分かった。また、付着散布を行う植物は冬に植物体が枯死した後も付着可能な状態の種子を付けたままの状態であるため、種子を散布できる期間が比較的長くなることが分かった。さらに、枯死した植物体は生育している植物体と比べて、倒れることで種子の結実する高さが変化するため、種子が付着しやすい動物種は、植物が生育しているときと枯死しているときとでは異なる可能性が示唆された。その他にも、在来哺乳類(例:タヌキ)より外来哺乳類(アライグマ、ハクビシン)のほうが種子を多く散布している可能性が浮かび上がってきた。本成果は、付着散布における植物-動物間のネットワーク(種間関係)の理解深化につながり、博物館と研究機関の連携によって未知の自然現象を解き明かす、新たな研究アプローチの道筋を拓くものである、と結んでいる(掲載誌:Acta Oecologica)。

情報源 東京農工大学 プレスリリース
機関 東京農工大学 ミュージアムパーク茨城県自然博物館
分野 自然環境
キーワード 外来種 | 体毛 | 種間関係 | 自然博物館 | 付着散布 | ひっつき虫 | 剥製模型 | 在来哺乳類 | チヂミザサ | イノコヅチ
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