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 侵略的植物の予備群?!長期トレンドから見えた国際枠組みのベースライン

発表日:2023.11.08


  農研機構と森林総合研究所は、日本に侵入した外来植物の種数を長期(1845~2000年)かつ年ベースで初めて推計し、国際目標に対する数値的なベースラインを示した。2022年12月に生物多様性に関する新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」が採択された。新枠組の2030 年グローバルターゲットには、侵略的外来種の導入・定着に関する施策のあり方や削減率の目安、島嶼などの重要度の高い場所における特段の取り組みの必要性が明記されている。日本をはじめとするKM-GBF締結国では、外来種のこれまでの侵入動向を精緻に把握し、自国の導入経路の特徴を精査することが喫緊の課題となっている。他方、日本には古くから維管束植物やその種子が導入されており、定着した植物は1,500種を超えると考えられている。その一部が侵略的外来種となり、駆除・根絶の対象となっていることは言うまでもない。外来植物は江戸末期以降に外国との交流が盛んになったことで急増し、今日まで増加の一途を辿っていると考えられてきた。本研究では先ず、意図的かつ非意図的に侵入した外来植物の「初記録年」を複数の図鑑やデータベースから収集し、導入経路の情報を追加したデータセット(1,300種以上)を作成し、幕末・開国以降の約150年間にわたるトレンドの分析を行っている。その結果、「新規侵入種数/年」の値は5種以下(1845~1900年)でしばらく推移し、1950年代後半の16種をピークに、近年では平均13種(1991~2000年)であることが判明した。初確認年が不明の種があることから、上記の数値は過小評価であるものの、“外来植物の種数が増加の一途をたどっている”というこれまでの認識を定量的に裏付けることができた。また、導入経路が不明の種が最も多かったが、全期間を通じて、意図的な持ち込みが非意図的な侵入を上回ってきたことが示唆された。日本のピークは諸外国よりも相対的に大きな値をとっているものの、1991~2000年は緩やかな減少のステージへの移行がうかがえた。本成果は、国別目標の設定や導入経路の管理に係る判断を行う際の参考にできるという(DOI:https://doi.org/10.3897/neobiota.83.101416)。

情報源 農研機構(農業環境部門) プレスリリース
森林総合研究所 プレスリリース
機関 農研機構(農業環境部門) 森林総合研究所
分野 自然環境
キーワード 外来植物 | 図鑑 | 侵略的外来種 | 昆明・モントリオール生物多様性枠組 | 2030 年グローバルターゲット | 初記録年 | 新規侵入種数 | 意図的な持ち込み | 導入経路 | 開国
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