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 入山前のひと手間(登山靴の清掃):ナッジの効果は知識・当事者意識に依る

発表日:2023.10.16


  東京農工大学と国立環境研究所の研究グループは、意図的でない外来植物の持ち込みを減らすために企画したナッジの効果を定量的に測定・分析した。生物多様性の損失とそれに伴う生態系サービスの劣化が世界的な課題となっている。直接的な圧力の減少と持続可能な利用に向けて、侵略的外来種の導入・定着を防止する施策の重要性が高まっている。本邦の国立公園では、来訪者の衣類や靴に付着した外来植物の種が 高山帯・亜高山帯に相当量持ち込まれ、侵略的な繁茂につながる事例がしばしば報告されている。一部の国立公園では、登山口付近に靴の洗い場などを設置し、生態系の人為的撹乱の軽減に努めている。しかし、入山前に登山靴を清掃する行動の定着化は、知識の付与や問題意識の醸成だけでは難しい(Akasaka, M. et al., 2021)。本研究は、先行調査研究の成果を踏まえ、生物多様性保全に直接寄与する一人ひとりの行動に対するナッジの有効性を示唆するものとなっている。妙高戸隠連山国立公園の火打山・妙高山の登山口に「靴清掃用のブラシやマット(以下『清掃ステーション』)」を設置し、そこに訪れた人々の行動を観察するとともに、アンケート調査を行っている(有効回答数:344)。行動観察等は4つの条件を無作為に変更しながら行われた(①清掃ステーションに誘導する足跡マーク(サイン)、②外来植物の種子に係わる情報提示2種(a.持込事実、b.持込抑止方法)、③情報提示なし)。今回の調査を通じて、清掃ステーションに導かれ、靴を清掃した訪問者の割合は、①で約21倍、②のb.で約5倍増加することが分かった(③に対するオッズ比)。また、靴を清掃した訪問者の割合は、知識・当事者意識と正の相関関係にあることが明らかになった。ナッジの介入効果を最大化するにはターゲットの個人的要因を考慮する必要がある、と提言している(掲載誌:Biological Conservation、DOI:https://doi.org/10.1016/j.biocon.2023.110139)。

情報源 東京農工大学 プレスリリース
国立環境研究所 報道発表
機関 東京農工大学 国立環境研究所
分野 自然環境
キーワード 生物多様性 | 生態系サービス | 侵略的外来種 | ナッジ | 妙高戸隠連山国立公園 | 行動変容 | ランダム化比較試験 | 登山靴 | 情報提供型ナッジ | 誘導サイン
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