東京科学大学(Science Tokyo)の水落特別研究員と前田教授らの研究グループは、"レアメタルフリーで高効率な水電解酸素生成触媒"を開発した。──本成果は、「フッ化鉄酸化鉛(Pb3Fe2O5F2)」が、同じ元素で構成されるPbFeO2Fよりも高い酸素生成活性を持つことに着目し、貴金属や希少金属を使用せずに、酸素生成電極触媒の性能を大幅に向上できることを実証したもの。研究グループは、Pb3Fe2O5F2とPbFeO2Fの性能を比較するため、詳細な電気化学測定を行った。その結果、層状ペロブスカイト構造を持つPb3Fe2O5F2の層間に局在するフッ素の高い「電子求引性」が、酸素生成の活性点である「鉄に作用」することで高い活性が得られることを明らかになった。つまり、貴金属や希少金属を使用せずに、普遍元素である鉄を活性化する「酸素生成反応」の応用性を裏付けるものとなった。──酸素生成反応は、水の分解による水素生成やCO2変換反応における重要な半反応である。今回の発見は、「酸素生成電極触媒」という新たな触媒の構造設計指針が示すものであり、電極触媒をめぐる資源制約やコスト面の問題解決につながるものであり、層状酸フッ化物のさらなる探索と触媒開発を進めることで、既存の材料を超える高活性な酸素生成電極触媒の開発が期待される。なお、本成果は、2024年11月13日付の米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に速報版としてオンライン掲載された。