経済産業省は「デジタル経済レポート:データに飲み込まれる世界、聖域なきデジタル市場の生存戦略」を発表した。このレポートは、同省大臣官房若手新政策プロジェクトPIVOT(Policy Innovations for Valuable Outcomes and Transformation)の一環として、デジタル経済プロジェクトチームにより作成されたもの。近年、日本の消費者や企業が海外のデジタルサービスを利用することで、海外への支払いが増加する一方で、日本のデジタルサービスの利用収入が増えないという状況が見られる。──本レポートの目的は、そうした「デジタル赤字」の背景にある構造問題を解明し、新たな産業戦略のアイディアを示すことである。背景分析に当たっては、主要企業の財務情報を基にした新推計モデルを用いて、デジタル赤字の構造問題を分析し、グローバル市場進出に基づく受取増加戦略を提示している。また、各国政府のデジタル赤字の状況と生存戦略を整理し、日本が参照すべき政策・産業モデルを提案している。従来のソフトウェア/ハードウェアを積み上げた2階建ての産業構造を、代替性の幅を横軸にとった「万年筆のペン先(nib)」のような産業構造にシフトすることを提案している。ペン先の広がり部分は日本が強みを持つ「アプリケーション」と「ハードウェアの基盤技術」を指し、ビックデータや企業の死蔵データ等の収集、整理、クレンジングを経てデータウェアハウスに統合し、その後分析・可視化・戦略的活用に進む運用ステップが望ましいと提案している。──総じて、ソフトウェアとデータが全ての産業の競争力を左右する「聖域なきデジタル市場」における日本の現状を懸念する内容となっており、無形資産時代における日本の産業競争力を強化するための道筋を示している。