名古屋工業大学・東京学芸大学・理化学研究所・東北大学・名古屋大学の研究グループは、誤情報を信じる人に訂正情報を効果的に伝える方法を明らかにした。研究の焦点は「訂正回避傾向」と呼ばれる心理的現象にある。これは、自身の信念と異なる情報を避ける傾向であり、過去の研究では約43%の人が訂正記事をクリックしないことが示されていた。今回の研究は、このような回避傾向を持つ人々に対し、どのような介入が有効かを検証したものとなる。
研究チームは、約5分間の動画を用いて「自分のクリック傾向」を振り返らせるメタ認知的介入を実施した。「メタ認知」とは、自分自身の思考や行動を客観的に捉え、調整する能力を指す。単なるクリック誘導では誤信念の修正にはつながらなかったが、この介入により、クリック行動と誤信念の両方に有意な改善が見られた。さらに、その効果は1週間後も持続していた。研究者らは、「訂正情報を届けるだけでは不十分であり、受け手が自らの認知行動を内省する機会を設けることが不可欠である」という点を最も強調している。
本成果は、ファクトチェックの設計において、表面的な閲覧数ではなく、認知的関与の深さを重視すべきであるという実践的な提言につながると思われる(掲載誌:国際会議論文 Proceedings of the 2025 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems)。