京都大学大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻の中田明伸講師らの研究グループは、大阪大学、岡山大学との共同研究により、希少金属に依存せず高効率なCO2変換を可能とする有機高分子光触媒を開発した。従来、CO2をギ酸などに変換する光触媒にはルテニウムやレニウムなどの希少金属が用いられてきたが、本研究では炭素・窒素・水素・酸素・硫黄からなる有機分子を光吸収部位とし、最大32.2%の反応量子収率を達成した。
この光触媒は、ドナー・スペーサー・アクセプターの3種の有機分子ユニットを階段状に連結し、分子内に多段階のエネルギー傾斜を導入することで、電荷分離状態を効率的に形成する設計指針に基づいている。アクセプター部位には金属錯体を反応中心として導入し、可視光照射下でCO2を高濃度のギ酸へと変換することに成功した。従来の二元系光触媒と比較して、反応効率は約18倍に向上しており、有機分子骨格のみで構成された光吸収部位によるCO2還元反応としては過去最高の効率を記録した。
本成果は、希少金属に依存しない光触媒設計の可能性を示すものであり、今後は反応中心の金属も地球上に豊富な元素へと置き換えることで、完全に持続可能な人工光合成系の構築を目指す。また、この設計はCO2変換に限らず、水素製造や有機合成反応など多様な分子変換への応用が期待される(掲載誌:Journal of the American Chemical Society)。
情報源 |
京都大学大学院工学研究科 研究・産学連携(最近の研究成果)
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機関 | 京都大学大学院工学研究科 大阪大学 岡山大学 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 光触媒 | 人工光合成 | 電荷分離 | CO₂変換 | 有機高分子 | 反応量子収率 | エネルギー傾斜 | 金属錯体 | 分子変換反応 | 希少金属代替 |
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