中央可鍛工業と名古屋大学発スタートアップのSyncMOF(シンクモフ)は、鋳造工程で発生する不要物を原料としたガス吸脱着材「Castreasure(キャストレジャー)」の合成に成功した。
Castreasureは、鋳造工程で回収・除去される未活用資源を用いて合成されたMOF(Metal Organic Frameworks:金属有機構造体)で、CO2をはじめとする多様なガスを選択的に吸脱着する機能を持つ。MOFは、金属イオンと有機配位子から構成される多孔性材料であることから、活性炭やゼオライトよりも比表面積が広く、吸着対象に応じた設計が容易である。──Castreasureは市販試薬から合成されたMOFと同等以上の性能を示し、鋳造由来の廃棄物に新たな価値を付与する「究極のアップサイクル」として注目される。両社は形状加工や耐久性の評価を行い、実用化に向けた開発が進める予定だ。
中央可鍛工業は1944年創業の老舗鋳造メーカーで、可鍛鋳鉄やダクタイル鋳鉄などの鋳物製品を主力とし、トヨタグループをはじめとする自動車産業との関係が深い。今回の取り組みは、同社の鋳造技術とSyncMOFの材料開発力を融合させたものであり、鋳造工程で発生するCO2の吸着・除去や、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)、DAC(Direct Air Capture)技術への応用も視野に入れている。一方、SyncMOFは、2019年に設立された名古屋大学発のスタートアップで、新規多孔性材料の合成・製造、性能評価装置の開発、ガス関連製品の開発などを手がけている。特にMOFの応用において国内外で高い技術力を有しており、今回の共同開発でもその知見が活かされた。──なお、Castreasureは、2025年大阪・関西万博の「MOF FES ヒーローになるCO₂プロジェクト」においても紹介されている。