鹿児島大学総合研究博物館および農林水産学研究科を中心とする研究チームは、鹿児島県奄美大島沖の深海(300m)で採集された魚類標本をトラギス科トラギス属のParapercis moki(パラペルシス・モキ)と同定し、新たな標準和名「ハネズトラギス」を提唱した。
Parapercis属は、前方が円筒形で後方が側扁した体形、犬歯状の歯列、鰓蓋の鋭い棘などの形態的特徴を持っている。世界で約90種が知られているが、P. mokiについては台湾南東部から得られた3標本のみとなっていた。今回の標本(標準体長99.0mm)は、延縄漁で捕獲されたアカヤガラの口腔内から発見された。同定の根拠として、眼間隔の狭さ、下顎の犬歯状歯4対、口蓋骨の2列歯、鰓蓋下部の大棘、背鰭の棘の長さの変化、体側の6本の横帯などを挙げている。今回の発見は、P. mokiの日本初記録であると同時に、最北端記録となる。本種の分布拡大は、海洋生物の地理的変動や深海生態系の理解に資するものとなる。標本は鹿児島大学総合研究博物館(同大学郡元キャンパス内)に所蔵されている。なお、"ハネズ"は、本種の体側に見られる赤橙色の横帯模様が、日本の伝統色である「朱華色(はねずいろ)」を連想されることから付与された。――古代から和歌や儀式衣装に使われてきた、紅花と梔子(くちなし)などの天然染料で染められた淡い赤色である(本サイト・ニュース担当調べ)。