宮崎大学・延岡フィールドの村瀬准教授らは、宮崎県門川湾において、これまで日本では確認されていなかったハゼ科の魚類「Bathygobius panayensis(ボウズクモハゼ)」を発見し、世界で2例目となる標本記録として報告した。
本種は1907年にフィリピン・パナイ島で採集された1個体のみが知られており、世界的にも極めて稀な魚である。今回の発見は、2022年9月に地元漁師の和田正昭氏が定置網漁で採集した個体に基づくもので、延岡フィールドに持ち込まれた後、詳細な形態観察が行われた。この魚はクモハゼ属に分類されるが、通常この属の魚が持つ頭部の鱗がほとんど見られないという特徴を持つことから、「ボウズクモハゼ」という標準和名が新たに提唱された。命名には、形態的特徴に加え、上皇陛下が長年研究されてきたクモハゼ属に関する知見も参考にされた。
近年、宮崎県沿岸では熱帯起源とみられる魚類の出現が相次いでおり、今回の発見もその一環と位置づけられる。研究チームは、今後も日向灘を中心とした海域で、日本未記録の魚類が発見される可能性が高いと指摘している。本研究は、地域の漁業者との協力によって実現したものであり、学術的意義に加え、地域資源の再評価や生物多様性の把握にも貢献する成果である。