国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所は、九州大学、東京大学、情報・システム研究機構(ライフサイエンス統合データベースセンターおよび国立遺伝学研究所)と共同で、日本人およびサウジアラビア人の実質的に完全なゲノム配列を決定し、新たな「ゲノム地図」としてパンゲノムグラフ「JaSaPaGe」を構築した。本研究は、アブドラ国王科学技術大学(サウジアラビア)との国際共同研究として実施された。
従来のヒトゲノム解析では、単一個人の参照配列を基準とする手法が主流であったが、これでは地域特有の遺伝的多様性が反映されにくいという課題があった。今回の研究では、日本人10人とサウジアラビア人9人の高品質な全ゲノムデータをもとに、二倍体ゲノムアセンブリを行い、従来の参照配列(GRCh38、CHM13-T2T)と比較して約3〜10%多くの遺伝的変異を検出可能であることが示された。
特に、薬物代謝に関与する遺伝子CYP2D6のコピー数(CNV)において、集団ごとの構造的多型が明瞭に識別され、個別化医療(プレシジョン・メディスン)への応用可能性が示された。これにより、従来の基準では診断が困難であった最大12%の遺伝性疾患患者に対して、より精度の高い診断が可能になると推定されている。
本研究成果はFAIR原則(Findable, Accessible, Interoperable, Reusable)に則り、日本DNAデータバンク(DDBJ)に登録され、誰でも自由に利用・再解析が可能である。国際的なパンゲノムグラフ構築の取り組みに対しても、日本および中東地域の遺伝的多様性を反映する重要な貢献を果たすと位置づけられている。本研究成果はFAIR原則(Findable, Accessible, Interoperable, Reusable)に則り、日本DNAデータバンク(DDBJ)に登録され、誰でも自由に利用・再解析が可能である。――国際的なパンゲノムグラフ構築の取り組みに対しても、日本および中東地域の遺伝的多様性を反映する重要な貢献を果たすと位置づけられている(掲載誌:Scientific Data)。