名古屋大学大学院医学系研究科の研究グループは、大気汚染物質であるPM2.5に含まれるスズ(Sn)が、スギ花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状と関連する可能性を示した。本研究では、ヒトを対象とした調査と動物モデル実験を組み合わせ、PM2.5成分と花粉症症状との関係を評価している(掲載誌:Allergy)。
今回、スギ花粉症患者44名と健常者57名を対象とした調査において、花粉症患者の鼻腔内に蓄積したスズの濃度が、健常者に比べて約3~4倍高いことが確認された。また、鼻腔内スズ濃度は、くしゃみや鼻水などの鼻炎症状の強さと有意な相関を示した。
さらに、アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いた実験では、PM2.5に含まれるスズが非アレルギー状態のマウスと比較して鼻腔内に2~3倍多く捕捉されることが示された。この際、鼻粘膜で過剰に産生されるムチンが、スズの捕捉に関与している可能性が示唆された。一方で、鼻腔内で捕捉されたスズ量の増加に伴い、肺に到達するスズ量は30~40%低下していた。
研究グループは、アレルギー性鼻炎を有する個体では、従来想定されてきた「PM2.5が鼻腔を通過して肺に到達する」という挙動が必ずしも当てはまらない可能性がある」と述べている。また、本成果は、特定のPM2.5成分が花粉症症状の増悪に関与し得ることを示す基礎的知見であり、健康リスク評価や環境対策を検討する際の科学的根拠の一部となり得るとしている。