東京大学大気海洋研究所の上坂怜生特任研究員と佐藤克文教授は、動物装着型の小型ビデオカメラを用いて、海鳥の排泄行動を記録・解析する研究を実施した。対象としたのはオオミズナギドリで、腹部にカメラを装着し、排泄腔付近を撮影することで、糞の頻度とタイミングを初めて定量的に明らかにした。
海鳥の糞には窒素やリンなどの栄養塩が豊富に含まれており、海洋生態系における栄養循環に重要な役割を果たすとされる。また、鳥インフルエンザウイルスなどの病原体を媒介する可能性もあるため、排泄行動の解明は感染経路の理解にも資する。本研究では、オオミズナギドリが4〜10分間隔で排泄していること、排泄はほぼすべて飛行中に行われ、着水中には糞をしないことが判明した。特に、着水中でも一度飛び立ってから糞を落とすという行動が確認され、排泄には明確な周期性があることが示された。
これらの知見は、海鳥が糞を通じて海洋に供給する栄養塩の量を評価するための重要な基盤となる。特に、海洋表層における窒素循環の定量的理解に向けて、海鳥由来の窒素供給量を推定する上での実測データとして活用可能である。さらに、海上での鳥インフルエンザ感染経路の解明にもつながる。研究成果は、科学誌『Current Biology』に掲載されており、国際先導研究やJST次世代研究者挑戦的研究プログラムなどの支援を受けて実施された。