森林総合研究所は、北海道大学ほか4機関・大学らと共同で、国内の温暖域に生息する在来鳥類の衰退傾向を全国調査により明らかにした(掲載誌:Scientific Reports)。
本研究は、環境省が1978年および1997〜2002年に実施した「全国鳥類繁殖分布調査」のデータに加え、2016〜2021年にNPO法人バードリサーチが主導した第3回調査の結果を統合解析したもの。全国2,000カ所以上の調査ラインにおける鳥類の分布と個体数の変化を評価した(研究ディレクター:同研究所・八木橋勉氏)。
解析の結果、1970年代から1990年代にかけて分布を縮小していた在来種の多くが、近年では分布面積を回復させていることが明らかになった。しかし、個体数は減少傾向にあり、草地など開けた場所を好む開放地性種(アカモズ、シマアオジ、アマツバメ、ビンズイなど)や水鳥(アマサギ、ゴイサギ)、猛禽類(トビ、サシバ)で顕著だった。一方、外来種(ソウシチョウ、ガビチョウなど)は分布・個体数ともに一貫して増加しており、温暖域では外来種が群集を優占しつつある可能性が示された。この傾向は、温暖化による生態系変化が在来種の衰退を招き、外来種の拡大を促進していることを示唆している。――研究者は、「国内の温暖域における鳥類群集の構造が大きく変化しつつある」と警告している。
本研究は、全国鳥類繁殖分布調査の第3回調査結果を基盤とし、温暖化が生態系に与える影響の実態把握と、在来種保全の必要性を示す重要な知見として社会実装が期待される。