国土交通省(水管理・国土保全局)は、1990年度から実施している「河川水辺の国勢調査」のうち、ダム湖に関する34年間の調査成果を初めて総合分析し、ダム湖が多様な生物の新たな生息地として機能していることを明らかにした。
本調査は、全国の国および水資源機構が管理するダム(令和5年度時点で129ダム)を対象に、生物相を定期的・統一的に記録しているもの。これまでに約1,200件の調査結果が蓄積されている。
今回の分析では、ダム湖の出現により、ミサゴやハヤブサなどの猛禽類が狩り場や繁殖地として利用する事例が増加していることが確認された。一方で、特定外来生物コクチバスや国外外来魚の分布拡大も顕著であり、在来種への影響が懸念される。特にコクチバスは、平成13年に矢木沢ダムで初確認されて以降、個体数が急増しており、定着が進行していることが判明した。
水鳥に関しては、ダム湖の面積が琵琶湖の0.5%程度であるにもかかわらず、越冬する水鳥の数は琵琶湖の約7割に達しており、カモ類やカイツブリ類の個体数・種数が増加していることが分かった。また、アユやサクラマスなどの回遊魚がダム湖を海のように利用し、自然な再生産が確認された事例もある。さらに、カジカガエルのような渓流性両生類の生息確認率が約9割に達しており、ダム周辺の自然度の高さを示している。水生昆虫のEPT種数(カゲロウ・カワゲラ・トビケラ)も、ダム上流で多く、下流では減少傾向にあるが、支川との合流点で回復する例が見られた。
なお、ダム整備に伴う生息場の改変に際し、代償措置として湿地や池沼のビオトープが着実に整備されており、全国25ダムで魚類72種、底生動物739種が確認されるなど、それらが新たな生息場として機能していることも確認された。――同省は、令和5年度分を含む本調査の詳細を「河川環境データベース」で公開しており、今後も経年的な分析結果を活用して、持続可能なダム管理の推進に役立てる方針である。