九州大学大学院農学研究院の研究グループは、小笠原諸島に生息するヒロズコガ科Erechthias属の小型蛾類について、網羅的な野外調査と標本調査を実施し、4種の新種と2種の新記録種を発見した。また、DNA解析により列島間での遺伝的分化も明らかにした(掲載誌:Zookeys)。
小笠原諸島は「進化の実験場」とも称される世界自然遺産であり、多くの固有種が生息する。ヒロズコガ科は枯死木や菌類、鳥の巣など多様な環境に適応する腐食性蛾類で、隔絶された島嶼環境における種分化の研究対象として注目されてきた。
今回の調査では、チチジマツマオレガ(E. mirabilis)、トリノスツマオレガ(E. nidumicola)、メダマモンツマオレガ(E. oculus)、キモンツマオレガ(E. flavimacula)の4種が新種として記載された。また、ナンヨウヒメツマオレガ(E. minuscula)とクロスジツマオレガ(E. atririvis)が小笠原諸島で初めて確認された。さらに、3つ以上の列島で採集された種についてCOIバーコード領域に基づくDNA解析を行った結果、2種において列島間で明確な遺伝的分化が確認された。――ただし、形態的な差異は明確でなく、種分化には至っていないと判断された。また、従来固有種とされていたオガサワラツマオレガ(E. itoi)については、国外の標本と同一の配列が確認され、人為的移動の可能性も示唆された。
本研究成果は、小笠原諸島におけるガ類多様性の解明に貢献するとともに、今後、他の昆虫群との比較や幼虫の生態解明を通じて、海洋島での固有種形成や生物進化の理解をさらに進展させる契機となるだろう。
情報源 |
九州大学 ニュース(研究成果)
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機関 | 九州大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 小笠原諸島 | 固有種 | 世界自然遺産 | 生物多様性保全 | DNAバーコーディング | 遺伝的分化 | 新種記載 | 海洋島 | COIバーコード領域 | 腐食性蛾類 |
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