摂南大学農学部応用生物科学科の福家悠介特任助教らの研究グループは、北九州市立自然史・歴史博物館、国立科学博物館、小笠原自然文化研究所と共同で、小笠原諸島に分布するとされてきた淡水エビ類の種数について、野外調査・文献調査・博物館標本の再検討を通じて見直しを行った(掲載誌:日本甲殻類学会和文誌Cancer)。
これまで、小笠原諸島にはテナガエビ科とヌマエビ科の計10種が分布するとされていたが、研究グループはそのうち「ミナミテナガエビ」と「コテラヒメヌマエビ」の分布記録に疑義を抱き、今回の再検証を実施した。ミナミテナガエビについては、過去の文献記録の源流が1914年以前の博物館標本に基づくものであることが判明したが、現存する標本を精査した結果、実際にはヒラテテナガエビであることが確認された――また、近年の野外調査でも本種は確認されておらず、分布域に小笠原諸島を含める根拠は乏しいと結論付けられた。
一方、ヒメヌマエビ種群については、父島・母島の4水系から採集した16個体を対象にDNAバーコーディングを実施した結果、すべてヒメヌマエビであることが判明した。コテラヒメヌマエビの分布を示す先行研究には同定根拠が示されておらず、現時点では分布の確証は得られていない。
これらの再検討結果から、小笠原諸島に分布する淡水エビ類は従来の10種ではなく、8種であると再定義された。研究者は、「今後も継続的な調査により、島嶼生態系の実態と変遷を明らかにしていく必要がある」と述べている。