九州大学と東京海洋大学の研究グループは、北太平洋において多層採水観測を行い、10〜数百 μmサイズの微細マイクロプラスチック(MP)の鉛直分布を高精度に検出することに成功した(掲載誌:Environmental Science & Technology)。
海洋中のMP調査は数百 μm以上の粒子を対象とした曳網調査が主流であり、微細MPの鉛直分布に関する知見は限られていた。本研究では、東京海洋大学の練習船「海鷹丸」を用いて、北太平洋の4地点で、海面から水深1,000 mまでの12層にわたる海水を採取した。その結果、海水1 m³あたり約1,000〜10,000個の微細MPが検出され、MPの鉛直分布と水塊構造の関係が初めて明らかとなった。特に、海水密度が1,023〜1,025kg/m³の等密度面に沿って、水深100〜300 mの中層を「数十年にわたり漂流する中性浮力に近いMP群」と、「生物付着により速やかに深海へ沈降するMP群」という、2つの輸送経路が示唆された。
採水した海水は合計50 Lと少量であるにもかかわらず、高精度で微細MPを検出する技術を確立し、世界初となる多層観測を実現したこととなる。また、研究グループは、船内に設置したクリーンブースでの作業や、非破壊・高回収率を実現する分析手法を確立することで、外部混入を最小限に抑えることにも成功している。今後は、観測データの蓄積とともに、MPが海洋大循環に乗って深海まで広がる実態や、MPに付着した生物起源物質が炭素循環に与える影響の解明に応用展開していく方針だ。