愛媛大学と八千代エンジニヤリングを中心とする研究グループ(他、日本エヌ・ユー・エス、オランダ・ワーゲニンゲン大学)は、河川を流れるプラスチックを自動で検出・分類・追跡する画像解析AIソフトウェアを開発した(掲載誌:Water Research)。
河川調査は目視による観測が主流であり、調査員の負担が大きく、洪水時には危険を伴う作業となるため、長期的かつ広域的なモニタリングの実施が困難だった。本研究では、深層学習モデルYOLOv8による物体検出、Deep SORTによる追跡、テンプレートマッチングによる流速計測を統合し、動画映像からプラスチックの種類別輸送量を自動算定する技術を確立している。
対象となるプラスチックは、飲料ボトル、レジ袋、食品容器、その他の4分類で、洪水時を含む多様な条件下でも安全かつ継続的なモニタリングが可能となった。これにより、河川から海洋へ流出するプラスチックの実態把握が飛躍的に進み、発生源対策や政策の効果検証にも直接的に活用できる。 本ソフトウェアは、八千代エンジニヤリングと愛媛大学が共同開発した河川プラスチックモニタリングシステム「PRIMOS」に搭載され、実河川での社会実装が進められる予定である。今後、導入・普及が進めば、流域圏全体における輸送過程の解明や、科学的根拠に基づく政策立案に資するものとなり、国際的な海洋プラスチック対策にも貢献するものとなるだろう。――本研究は、環境総合推進費、ムーンショット型研究開発事業、科研費基盤B、環境省実証事業「令和6年度海洋ごみの実態把握及び効率的な回収に関する総合検討業務」の支援を受けて実施された。