京都大学大学院情報学研究科の大塚敏之教授は、日立製作所と共同で、地域コミュニティの多様な価値観をリアルタイムに反映しながら仮想発電所(VPP)を安定運用できる新たな制御技術を開発した(掲載誌:2025 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics)。
VPPとは、太陽光発電や蓄電池、電気自動車などの分散型エネルギー資源を情報通信技術で統合・制御し、あたかも一つの発電所のように機能させる仕組み。脱炭素社会や分散型エネルギー社会への移行が進む中、地域住民の多様な価値観を反映したエネルギー運用が求められている。
本技術は、「経済性最大化」などの固定的な指標に加え、CO₂削減や利便性など、環境意識や社会の状況に応じて変化する価値観を柔軟に制御に組み込むことができるものとなっている。従来の技術には無かった、①将来の挙動を予測しながらエネルギー資源を動的に配分するモデル予測制御(MPC)、②参加者の選好を学習し制御パラメータに反映するPreference Learning(選好学習)、③電力の安定供給と価値観反映を両立するロバスト制御の三要素で構成されている。特に選好学習では、専門知識がなくても「どちらの運用結果が望ましいか」を選ぶだけで、参加者の価値基準を自動的に学習・反映できる点が大きな特徴となっている。シミュレーション実験では、CO₂排出量重視で最大約20%削減、コスト重視で約16%低減を達成し、コミュニティごとの異なる価値観に応じた安定運用が可能であることが確認された。
今後は地域参加型の実証を重ねながら、交通インフラなど他分野への応用や新たな制御コンセプトの研究も進める予定である。なお、本成果は、京都大学と日立製作所による共同研究「動的アセット配分制御実現にむけた最適制御技術の検討」に基づくものであり、持続可能な社会の実現に向けた地域主導型エネルギー運用の新たな展開が期待される。
情報源 |
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機関 | 京都大学 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 分散型エネルギー | 持続可能な社会 | 仮想発電所 | CO₂排出削減 | モデル予測制御 | 選好学習 | ロバスト制御 | 地域参加型 | エネルギー資源配分 | 周波数安定化 |
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