慶應義塾大学は、東京大学総合研究博物館と共同で日吉キャンパス(神奈川県横浜市港北区)において約30年ぶりとなる陸・淡水産貝類相の大規模調査を実施し、24科44種の貝類を確認した(掲載誌:日本貝類学会誌ちりぼたん)。
本調査は、慶應義塾の付属高校を含む一貫教育校の生徒が主体となって行われ、環境省レッドリスト準絶滅危惧種ウメムラシタラなどの希少種を新たに発見した。学生による調査活動は、自然教育の実践例としても高く評価される。
貝類は移動能力が低く、環境変化の指標生物として知られている。日吉キャンパスでは1990年代以降、貝類相に関する新たな調査が行われておらず、今回の調査はキャンパスの生態系変化を把握する重要な機会となった。2023年5月から2024年10月にかけて実施された調査では、湿潤な森林環境を好むオオウエキビや微小陸産貝類ウメムラシタラなど15種が新たに記録され、都市部の緑地における希少種の保全の必要性が明らかになった。一方で、外来種の分布拡大も確認された。チャコウラナメクジやサカマキガイなど11種の外来種がキャンパス内の広範囲に生息しており、生活排水の影響を受けた水域でも繁殖が進んでいる。また、戦時中に建設された日吉台地下壕内では初めて生物相調査が行われ、湿度の高い暗所環境に適応した陸産貝類が確認されたが、淡水産種は一切確認されなかった。
今後は、希少種の生息地保全管理、外来種の継続的モニタリング、そして自然教育への活用を柱に活動を展開する方針である。本成果は、慶應義塾大学が推進する一貫教育とキャンパス環境の保全活動を支える基盤資料として活用される。