国土交通省は、サイバー空間上に構築した流域の実験場「流域デジタルテストベッド」の段階的な公開・運用を開始した。この情報基盤は、流域に関する多様なデータをクラウド環境上で活用することで、産学官連携による研究開発や現場実装の加速化に資することが期待されている。
同省は今回、従来の呼称(流域治水デジタルテストベッド)を改めるとともに、流域総合水管理への施策展開を見据え、再構築を図った。今回の試験利用では、衛星画像と3次元地形データを組み合わせることで、洪水時の河川水位を縦断的に把握する手法や、ダム等施設の変状を視覚的に捉える手法の研究開発が進められる予定だ。具体的には、衛星画像から水際の位置を検知し、地形データと照合することで水位を推定する技術や、SAR衛星による反射強度画像と3次元空間データを用いたダムの変位検出技術が試行されている。これらの手法は、災害時の迅速な状況把握や施設管理の高度化に資するものである。
令和8年度事業「河川砂防技術研究開発」の公募に当たり、応募者は「流域デジタルテストベッド」を試行的に利用することができる。国土技術政策総合研究所(NILIM)の専用サイトにおいて、クラウド使用料については、Microsoft Azureの料金計算ツールを用いて概算を算出し、利用内容や期間に応じて調整される。仮想マシン(例:F64ams_v6)による数値解析では約21千円/日、ストレージ利用では約15千円/TB/月、データダウンロードでは約16千円/TB(100GB/月の無料枠あり)などのクラウド使用料算出事例が示されている。
同省は今後、NILIMの研究開発や公募型事業の応募者による試行を通じて、段階的に実験利用を拡大する方針である。