農研機構と足立石灰工業は、稲わらを石灰処理後に高密度化する「CaPPAプロセス(Calcium hydroxide Pretreatment for Pressing Agricultural by-products)」を共同開発した。本技術は、国産バイオエタノールの原料として期待される稲わらの輸送・貯蔵性を向上させるとともに、糖化特性を高めることで非可食バイオマス原料の価値を飛躍的に向上させる可能性がある。
「CaPPAプロセス」は、稲わら裁断物に石灰と水を混合し常温で静置することで改質し、加圧・乾燥を経て高密度な一次加工物を得る技術。改質後の稲わらは、見かけ密度が従来の0.1 g/cm³から0.23 g/cm³に向上し、輸送・貯蔵効率が大幅に改善される。また、石灰処理によって酵素糖化性が高まり、グルカン由来のグルコース遊離率は2.6倍、キシラン由来のキシロース遊離率は9.1倍に上昇した。これにより、糖化工程の簡素化が可能となり、地域分散型のバイオエタノール製造にも適した原料供給が実現する。
本プロセスは、従来のアンモニアや塩酸を用いた前処理法と異なり、劇物を使用せず安全性が高く、地域における導入・普及に適している。また、改質物はペレットや板状に加工でき、長期備蓄が可能な「備蓄糖」としての機能も持つ。この特性は、炭素プールとしての評価にもつながり、農業由来の脱炭素メリットを訴求できる。
農研機構らは、地域資源の有効活用と脱炭素社会の構築に貢献する「日本型バイオエコノミー」の新展開を支える中核技術と捉えている。今後、石灰製造企業やバイオ企業との連携を通じて、原料加工拠点の整備と技術の高度化を進める計画である。