AdvanSentinel(出資構成:塩野義製薬50%・島津製作所50%)と神戸大学は、環境DNAを電源不要・短時間で濃縮可能な新技術「QuickConc®」を共同開発し、生物多様性モニタリングの現場実装を加速する成果を発表した(掲載誌:Ecology and Evolution)。
環境DNA分析は、生物を直接捕獲せずに生息状況を把握できる非侵襲的手法として注目されているが、従来の濃縮法は専用機材や長時間作業を要し、特に高濁度水ではフィルターの目詰まりが課題となっていた。QuickConc®は、カチオン性物質によってDNAとシリカ表面の相互作用を高め、ガラス繊維と懸濁固形物を一括捕集する設計により、電源不要・数分で濃縮が完了する。河川・海水・ため池を対象とした比較実験では、従来法に比べて5〜10倍のDNA収量を達成し、次世代シーケンサーによる解析でも検出魚種数が増加した。さらに、検出種構成のばらつきが小さく、再現性の高いデータ取得が可能であることが示された。
神戸大学の源利文教授は「QuickConc®は市民参加型調査や環境教育にも活用でき、環境DNA分析の普及促進に貢献する」と述べている。本研究はSATREPS(JICA・AMED)による支援を受けて実施された。