大妻女子大学家政学部ライフデザイン学科の小関右介准教授を中心とする研究グループは、福井県里山里海湖研究所、龍谷大学などと共同で、環境DNA分析における配列データから「真のDNA配列」を高精度に抽出する新たなフィルタリング手法を開発した(掲載誌:Molecular Ecology Resources)。
環境DNA分析は、生物を直接捕獲せずに水や土壌中のDNAから生物情報を得る技術であり、生物多様性調査や資源管理に広く活用されている。従来の環境DNA分析では、次世代シーケンサーによって得られる配列データに「偽のDNA配列」が混入することが課題とされてきた。これらはPCR過程などで生じるノイズであり、種内の遺伝的多様性を評価する際の信頼性を損なう要因となっていた。既存のフィルタリング手法では、除去の厳しさを恣意的に設定する必要があり、精度や再現性に限界があった。
本研究では、偽のDNA配列と真の配列のリード数(読み取り量)の違いに着目し、統計的にしきい値を設定することで、偽配列を選別・除去する手法を構築した。この手法は、R言語の拡張パッケージ「gmmDenoise」として無償公開されている。性能評価では、真の配列が既知であるアユの環境DNAデータを用いて既存手法と比較し、同等またはそれ以上の精度で偽配列を除去できることが示された。さらに、河川の魚類群集を対象としたメタバーコーディングデータに本手法を適用し、複数魚種のDNA配列を抽出。アカザについては、既知の遺伝的多様性パターンと一致する結果が得られ、未知のDNA型も検出された。これにより、本手法が種内の遺伝的多様性評価に有効であることが実証された。