岐阜大学応用生物科学部と東京大学大学院農学生命科学研究科などの研究グループは、岐阜大学附属位山演習林における長期水文観測データを解析し、森林植生の違いが渓流水温に及ぼす影響を実証的に明らかにした(掲載誌:Journal of Hydrology)。
戦後の拡大造林政策により、日本の森林の約4割はスギ・ヒノキ人工林で占められている。一方で、天然性の高い落葉広葉樹林も存在し、両者の違いを理解することは水資源管理や生態系保全を考えるうえで重要な課題となっている。これまで、森林が持つ洪水緩和機能や水資源涵養機能については多くの研究が行われてきた。しかし、水域生態系に直接影響を及ぼす渓流水の水温形成について、森林の種類ごとに比較した研究は十分ではなかった。
本研究では、2011~2018年の長期観測データを用い、落葉広葉樹天然生林とスギ・ヒノキ人工林の水温変動を比較した。その結果、人工林では年水温変動幅が天然生林より2.8℃大きく、夏季最高水温は1.1℃高く、冬季最低水温は1.6℃低いことが判明した。さらに、落葉広葉樹天然生林では夏季降雨時に水温緩和効果が顕著であることが示された。
流域における水温形成は流出過程と密接に関係しており、地下水流出の寄与割合が高いほど水温変動は小さくなることが定量的に示された。線形混合モデルによる解析では、スギ・ヒノキ人工林では地表流出率が約70%にピークを示す一方、落葉広葉樹天然生林では約55%であり、地下水の寄与が高い傾向が明らかになった。研究グループは今後、「植生の違いが流出機構に及ぼす影響や、温暖化による水温形成への影響を解明する必要がある」と述べている。
| 情報源 |
岐阜大学 研究・採択情報
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| 機関 | 岐阜大学 東京大学大学院農学生命科学研究科 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 流域管理 | 人工林 | 温暖化影響 | 地下水流出 | 森林植生 | 水温変動 | 地表流出 | 水文観測 | 天然生林 | 水資源涵養 |
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