北海道大学大学院地球環境科学研究院・工藤岳特任准教授らの研究グループは、北海道大雪山系の高山帯では雪解けの時期に応じて植物群落の開花タイミングが大きく変動する一方で、マルハナバチの出現ピークは毎年8月上旬で安定していることから、雪解けが早まった年には植物の開花ピークがハチの活動ピークよりも先行し、「季節性のミスマッチ(フェノロジカルミスマッチ)」が生じていることを明らかにした(掲載誌:Oecologia)。
工藤特任准教授らは、環境省のモニタリングサイト1000事業の一環として、市民ボランティアと協力しながら、気候変動が同地における高山植物の開花時期とマルハナバチの個体群動態に及ぼす影響を12年間にわたり調査してきた。――マルハナバチは寒冷地に適応した社会性昆虫であり、多くの高山植物にとって重要な花粉媒介者である。本研究では、風衝地群落と雪田群落の開花時期を記録し、マルハナバチの種別・個体数を定期的に地道に観察した。その結果、気温が1℃上昇し、融雪が10日早まると、高山帯全体の開花期間は約9.2日短縮されると予測された。また、フェノロジカルミスマッチの影響は種や地域によって異なり、短舌種のエゾオオマルハナバチは翌年に個体数が減少した一方で、中舌種のエゾヒメマルハナバチや長舌種のエゾナガマルハナバチは、アザミ類が多い地域では翌年に個体数が増加する傾向が見られた。さらに、活動期の高温は高山性マルハナバチに負の影響を与え、猛暑の年には個体数が減少することが分かり、温暖化は直接的な気温上昇に加え、植物との季節的なズレを介して間接的にも影響を及ぼすことが示された。特に高山帯に定住する短舌種は温暖化に対して脆弱であり、今後、種組成が変化する可能性があることや、「温暖化による生物間相互作用の変化は地域性に強く依存するため、予測モデルの構築には地域特性を考慮したアプローチが不可欠である」と指摘している。
情報源 |
北海道大学 プレスリリース(研究発表)
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機関 | 北海道大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 気候変動 | マルハナバチ | 開花時期 | モニタリングサイト1000 | 地域特性 | 高山生態系 | 温暖化影響 | ポリネーター | 季節性ミスマッチ | 雪田群落 |
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