ANAホールディングスと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、定期旅客便に搭載した機器による大気成分の自動観測を開始した。本技術は、人工衛星「いぶき」(GOSAT)で培ったリモートセンシング技術を応用し、航空機から都市域の温室効果ガスを高い頻度で測定するものである。
これまで、航空機を用いた大気環境の観測は、観測装置を都度持ち込む方式が一般的だった。今回、ANAが航空機の客室を改修し、観測機器を常設することで、定期便運航に合わせた継続的な観測が可能になった。これにより、衛星による広域観測と航空機による高頻度・詳細観測を組み合わせ、都市域の排出評価に役立つ精度の高い観測網を構築できる見込みだ。
今後は観測対象の拡大とデータ利活用事業の構築を進め、国際機関や自治体への科学的エビデンス提供を目指す。ANAとJAXAは「航空機と衛星の複合観測により、脱炭素社会の実現に貢献する」としており、既存の航空機観測プロジェクトと並ぶ、環境モニタリングの新たなモデルとして注目される。