和歌山工業高等専門学校生物応用化学科のスティアマルガ准教授らは、東京大学総合研究博物館に収蔵・検証済みの標本に基づくDNA解析により、ベトナムでは50種以上の巻貝が食用として消費されている実態を明らかにした(掲載誌:Future Foods)。
ベトナムは海産の巻貝多様性が豊かである一方、食用種の分類学的調査は限定的であり、水産資源管理や食品安全の観点から課題が指摘されてきた。流通実態の把握と科学的トレーサビリティの確立が求められているが、これまで検証可能な標本と高品質な参照配列データの整備が不十分であった。
そうした課題の解決に向け、本研究では、巻貝の形態同定のみならず、分子系統を統合する反復的分類とDNAバーコーディングを行った。遺伝子マーカーはCOI、12S rRNA、18S rRNA、28S rRNA、ヒストンH3を用いた。ベトナム各地の魚市場から収集した食用巻貝の博物館標本126点を解析し、形態学的には113点を53種に暫定同定し、すべての試料で配列を取得した。系統樹と遺伝距離の検討により、種および属の単系統性が支持された。また、全マーカー併用時の種同定率が2023年で58%、2025年で79%に上昇し、COIのみでは51%から62%であった。
研究チームは、本成果は「公共参照データベースの継続的改善が同定率の向上に寄与するものであり、今後は東南アジアの食用巻貝の監視や水産資源管理、食品トレーサビリティの高度化に向け、東京大学総合研究博物館の標本に裏付けられた参照配列基盤の拡充が有効だ」と述べている。なお、成果は東京大学総合研究博物館スクール・モバイルミュージアムと文京区が共催する展示「食の貝」(2025年11月20日〜2026年3月31日)でも紹介されている。