海洋研究開発機構は、英国サウサンプトン大学との共同研究により、サンゴの組織や骨格に取り込まれた数マイクロメートルサイズのマイクロプラスチックを、取り込まれた状態のまま迅速に可視化する分析手法を開発した(掲載誌:ACS Environmental Science & Technology)。
サンゴは成長層を伴って骨格を形成するため、骨格中の粒子の位置から取り込み時期を推定できるが、従来のFT-IRやラマン分光による分析は測定時間が長く、広範囲の面的観察が困難であった。本研究では、コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)と二光子励起蛍光(TPEF)を組み合わせた顕微鏡法を応用し、サンゴ体内のマイクロプラスチックの三次元的な可視化に成功した。CARS信号とTPEF信号を同時に分離して取得することで、サンゴ骨格・組織とプラスチックの信号を明確に区別しながら、従来手法より圧倒的に短時間で測定できることを示した。測定速度は数秒間に多数点を取得できるレベルであり、広域の定量分析が可能となった。
高濃度のポリエチレン粒子を暴露したサンゴ(Acropora polystoma)を対象に分析したところ、白化や組織欠損がみられる個体では、組織に加えて骨格にも粒子が集中して蓄積していることが確認された。健康なサンゴでは取り込みが限定的であったことから、サンゴの状態が悪化すると骨格への取り込みが進むことが明らかになった。この知見は、海水温上昇など環境変化がマイクロプラスチック蓄積を促進する可能性を示すものである。
本手法は、サンゴ体内のプラスチックを迅速かつ空間的に把握できる点で有用であり、サンゴ骨格を海洋プラスチック汚染のアーカイブとして活用する道を拓き、過去から現在に至る汚染の変遷を追跡できる可能性がある。