アメリカとモンゴルの研究チームは、モンゴル帝国の拡大は当時の降水量の大幅な増加と関連があり、気候と人間の歴史との同様の関連が今後にも当てはまる可能性があるという研究結果をアメリカ科学アカデミー紀要に発表した。研究では、中央モンゴルに生育するシベリア松の年輪を調査し、そこに残された過去約1100年間の気候状態の記録を分析した。その結果、チンギスハンが初めて権力を掌握した当初は厳しい干ばつ期だったが、モンゴル帝国を急激に拡大した治世後半は、過去1000年間で最も湿潤な時期だったという。降水がもたらす肥沃な土地で軍隊や馬の力が増強され、帝国拡大を支えたとみられる。今回の研究は、現在の半乾燥地域における気候・植生・人間活動の複雑な相互作用を理解する手がかりとなった。現在の中央モンゴルの干ばつは、人間に起因する温暖化で悪化したと研究者らは指摘しており、今後も温暖化で降水量が増加しない場合、モンゴル及び内陸アジアで干ばつが変則的に発生し、社会・経済・政治に多大な影響をもたらす可能性が高いとしている。