アメリカのウッズホール海洋研究所を中心とした国際科学者チームは、世界の海洋の水銀濃度を初めてつきとめ、人間起源の水銀量が増加していると発表した。チームは、過去8年間の調査航海で収集した海水サンプルのデータから、水深1000メートル以上の深層でのリンと水銀の比率を特定した。この深さの海水は、産業革命以降の地球の大気と接触しておらず、自然に存在する水銀量を推定することができる。さらに、人間起源の水銀量を特定するため、チームはCO2に着目した。CO2は近年よく研究され、広範囲で詳細なデータが豊富に存在している。CO2と水銀は、石炭の燃焼やセメント製造など同じ人間活動で発生することから、チームはこの二つを関連付ける率を割り出して海洋表層での水銀の量を推定した。その結果、海洋には、約6万トンから8万トンの水銀汚染があることがわかったという。100メートルより浅い海水の水銀濃度は、産業革命以前から3倍に、海洋全体では約10%増加した。チームは今後の研究の基準となる情報が得られた点で重要な結果だとしている。