南極半島は地球上で最も急速に温暖化が進む地域の一つであることが明らかになってきたが、その影響が、食物連鎖の頂点にいるペンギン等の生物だけではなく、生態系の基盤である微生物にも及んでいることを示す研究成果が、2009年3月13日付けサイエンス誌に掲載された。アメリカ国立科学財団(NSF)の長期生態研究(LTER)プログラムに参加している科学者らは、海水の色や温度、海氷、風に関する人工衛星データから、植物プランクトンが気候変動の影響を受けていることを明らかにした。特に、微生物への影響が南極半島の北部と南部で全く異なっていた点が注目されている。北部では、海氷が減少し、風も強くなり、表面海水がかき混ぜられた結果、表層の海水層(混合層)が厚くなり、植物プランクトンに届く光の量が減少。植物プランクトンの繁殖率が減少し、種類も変化した。反対に、南部では、海氷は減少しているものの、風が弱いために混合層が薄くなって光の量が増し、植物プランクトンの成長を促し、大型のものも増えたという。