アメリカ海洋大気庁は、北極の夏季の風の変動が北極海の氷消失と北半球の気候に影響を及ぼすとの研究結果を発表した。アメリカの海洋学者らの研究チームは、2007年から2012年の亜北極における初夏の風況パターンを観測し、過去のデータと比較した。その結果、西から東へと流れる傾向にあった北極上空の風が、2007年以降は南北に波状に流れるようになり、南からの暖かい空気が北極に運ばれて、海氷を大西洋に押し流していることが分かった。夏季の北極の氷の減少、グリーンランドの氷床消失、北米・ヨーロッパの気候には関連があり、その要因となっている風の変動には、温暖化の直接的な影響だけでなく、北極のさまざまな物理的要因が相互に作用する「北極温暖化増幅」(他地域に比べ北極で温暖化が加速する)現象が関係していることが示された。研究者らは、この増幅現象が今後数十年にわたって強まり、氷が消失して北極における太陽エネルギーの吸収が増加すると予測しており、これにより北半球で大雪や熱波などの極端な気候現象が頻発することを懸念している。